八結合同企画合作交流掲示板



カテゴリ:[ 趣味 ]


4件の内、新着の記事から50件ずつ表示します。


[244] (無題)

投稿者: 投稿日:2017年11月14日(火)19時48分56秒 p1754200-ipbf1309funabasi.chiba.ocn.ne.jp  通報   返信・引用

l




[243] (無題)

投稿者: 投稿日:2017年11月14日(火)19時47分52秒 p1754200-ipbf1309funabasi.chiba.ocn.ne.jp  通報   返信・引用



[240] 第四章 やはり、彼らの祭りは終わらない。其ノ伍

投稿者: キラ 投稿日:2017年11月14日(火)19時33分27秒 p1754200-ipbf1309funabasi.chiba.ocn.ne.jp  通報   返信・引用   編集済

【白組side・回想】


 騎馬戦が始まる少し前、私は密かに彼女を校舎裏に呼び出していた。

 会場の喧騒が遠く聞こえる……そんな人気の無い所で待つ事しばらく、彼女……相模南さんは、酷く狼狽した表情で私の前に姿を現した。


「ゆ、雪ノ下さん……うちに用って何……?」

 相模さんは目線を合わせる事もせず、自身が呼び出された理由を私に問いかける。

 彼女とは過去に二度、奉仕部を通して関わった事があったが、そのどれもが彼女自身にとっては良い思い出とは言えなかっただろう。

 あれから随分と時は流れたが、やはり今も尚、彼女にとって、私の存在は都合が悪いのかも知れない。

 でも、それでも。最後の一手の為にも、彼女の協力は、白組の勝利の為にも必要不可欠なのだ。


「次の騎馬戦についてなのだけれど、相模さんにお願いしたい事があるの」

「そ、そんなの、うちじゃなくて三浦さんや一色さんに頼めばいいんじゃないの……」

 私の言葉に、彼女は我関せずと言った風に返して来る。

 そんな彼女の言葉を意に介す事も無く、私は続けた。


「いいえ……これは、相模さん、あなたにしか頼めない事なの」

「うちに……?」

「ええ……比企谷くんに一矢報い、葉山君や由比ヶ浜さんに勝つ為には、相模さん……あなたの力が必要なの」

「…………………」

 彼女の感心を引ける言葉を頭の中で選び、私は続ける。

 彼女の心の底にある微かな蟠(わだかま)り、その発端となる彼等の名前を出す事で、ようやく彼女は聞く耳を持ってくれた。


「……うち、何も出来ないかも知れないけど……聞くだけ聞いてみるよ……話して……くれないかな」

「ええ、ありがとう……安心して、あなたへのお願い事は、そう難しい事ではないわ……」

「……どういうこと……?」

 彼女の問いかけに私は一呼吸置き、次の言葉を紡ぐ。


「次の騎馬戦で、もしも時間切れ間際になって私が倒されたら……その時は、相模さんは一目散に敵陣目掛けて旗を倒しに行って欲しいの、それが必ず白組の勝利に繋がるから」

「……え、それだけ?」

「ええ……簡単でしょう?」

「いや、確かにそうだけど…………」

 まるで肩透かしを喰らったように相模さんは溜息を吐き、肩を落とす。

 その仕草は、期待外れと言うよりも、不安から解放され、安堵したかのように見えた。


「びっくりしたぁ……うちだけ特攻して来いとか、そんな事お願いされるのかと思った」

「そんな、彼じゃあるまいし、あなたにそんな危険な事、させられないわ」

「……うん……そう、だよね……」

「高校最後の晴れ舞台よ……相模さんなら、喜んでやってくれると思ったのだけれど……どうかしら」

「最後の晴れ舞台……か……」

 その言葉を反復し、しばし彼女は考え込む。

 正直、彼女がこの案を断るとは思ってはいなかった。小心者ではある反面、目立ちたがりである彼女であれば……ほぼ間違いなく、私の話に同意してくれる筈だ。


「……確かに、去年の文化祭の時も、その次の体育祭の時も、うち、結局何も出来なかったからなぁ……最後ぐらい、うちが何かやったっていいよね」

「相模さん……」

「うん、やってみるよ、雪ノ下さん」

 そう、にこりとした笑顔で、相模さんは声を返してくれた。


「やっぱ最後ぐらいは勝っておきたいしさ、葉山くんにも、結衣ちゃんにも……アイツにも……って言うか、比企谷の奴にはマジで最後に一泡吹かしてやりたいし」

「ええ、私も同じよ……あの人達にだけは、負けたくないの」

「雪ノ下さん、ありがとう……それと、ごめんね」

 礼の言葉と共に突如投げ掛けられる、謝罪の言葉。

 彼女に謝られる事に心当たりが見つからず、私は彼女に問い掛ける。


「……? 何故、あなたが謝るの?」

「去年……さ……うち、あんだけ大きい事言ったのに、結局何もできてなかった……それどころか、みんなに迷惑しかかけてなかったよね……」

「それは……」

「今言わなきゃさ、うち、もう一生こういう事言えないだろうし……そんなのうちも嫌だし、ちゃんと、昔の自分とも向き合いたいの」

「今度こそ成長……しなきゃ、うち、本当に変われなくなっちゃうから……」

 彼女の眼には、私が初めて見る真剣さが宿っていた。

 それは、取り繕いや見栄の感情とは違う、彼女の誠意――。


 過去と向き合う彼女の、確かな強さの表れだった。


 ああ、今の彼女になら、安心して託す事が出来る……、私が倒れた際の、もしもの時の逆転の一手を……。


「…………相模さん……私もよ、私も……あの時、姉さんの挑発を受け流せなかった私にも責任はあったのだから」

「雪ノ下さん……」

「それが結局、最後にあなたを追い詰める事になってしまった……私の方こそ、悪い事をしたわ……ごめんなさい」

 そう、あの時の責は彼女だけにあるのではない。幼稚だった私もまた、反省すべきなのだ。

 そして、彼女の口から誠意の言葉が聞けた。それだけでもう十分だった。


「うん……じゃあさ、お互いに謝ってばかりってのもなんかあれだし、ここは間を取っておあいこって事でいいんじゃないかな?」

「相模さん……ええ、ありがとう……」

「うちに任せて、もしも雪ノ下さんが脱落しちゃったその時は……うちが白組を勝たせてみせるから」

 彼女の顔に憂いの表情ではなく、強い意志が込められる。

 その表情に、安心にもにた心地良さが私の胸中に広がって行く……。


「ああ……でもでも、葉山くんも結衣ちゃんも手強そうだし……うち、本当に大丈夫かな……」

「うふふ、大丈夫よ……相模さんに活躍してもらう時には、みんな私が倒してるから」

「そっか……じゃあ大丈夫……かな?」

「ええ……相模さん、最後の詰めはあなたに託します……宜しく、頼むわね」

「こちらこそ、雪ノ下さん……改めて、よろしくねっ!」

 そして互いに手を合わせ、少し涼んで行くと言う彼女を残し、私は白組の席へと戻っていく。

 あの時の迷走も、決して無駄ではなかった、去年彼女が掲げた目標……彼女の成長は、一年の時を経て、ようやく達成されたのだと……私は思う事が出来た。


 ――こうして私は、彼女に、騎馬戦の逆転勝利を託したのだ。

  ×  ×  ×

【赤組side】


 最後の最後、雪ノ下の戦略と相模の捨て身の一撃により、赤組は大敗を喫する事となった。

 その結果は副将が全滅し、大将騎も討ち取られた上、本陣も落とされるという、まさに大敗である。正直、泣きそうなぐらいボロボロにやられてしまった。

 それでもまだ赤組全員の心が折れていなかったのは、海老名さんが生き残っていた事で、奇跡的に殲滅ボーナスまでは取られなかったという事だ。

 大敗はしたが、首の皮一枚は残された。 僅かではあるが、まだ赤組にもチャンスは残されているのだ。


「みんな!! やられはしたがまだ負けと決まった訳じゃない!! 最後の望み、二人三脚に全てを賭けよう!!」

「ああ!! まだ負けてねえ!! 行くぞお前ら!! 次の一戦で俺達の大・大・大逆転だあああぁぁぁ!!!」

 葉山の鼓舞が敗北に消沈しかけている赤組の選手全員に向けて投げかけられる。

 開戦前と同様……否、それ以上とも思える熱狂を聞き流しつつ、俺は先程の合戦を振り返り、考えを巡らせていた。


「しっかし……雪ノ下の奴、勝つ為に相模まで利用するとはな……」

「さがみんを利用……?」

 俺のぼやきに隣の由比ヶ浜がオウム返しする、なんだ、聞いてたのかよ。


「ああ、こればかりは俺の相模に対する認識と、相模の性格を上手く汲み取った、雪ノ下の勝ちだ」

 ……そう、俺と彼女は決して同格ではなかった、策略の上でも、雪ノ下は俺の遥か先を行っていた……。

 ああ……一時でも自分が雪ノ下と同格だと思っていた事が恥ずかしい、思い上がりも大概にしろよこの野郎……と、俺は数分前の自分をぶん殴ってやりたい衝動に駆られていた。


「相模の性格を考えりゃ乗せるのは簡単だ、葉山や由比ヶ浜の名前を上げて 『あなたにしか任せられない』とでも言えば、ほぼ間違いなく相模は雪ノ下の指示に従うだろうしな」

「ん~、本当にそうかなぁ」

 俺の考えに由比ヶ浜は尚も疑問符を投げかけていた。


「いくらゆきのんが負けず嫌いでも、勝つ為に誰かを利用したりするような事、きっとしないと思うけど……」

「…………」

 確かに、由比ヶ浜の指摘ももっともである、雪ノ下は根っからの負けず嫌いではあるが、その為に他者を利用する程冷血ではない事もまた、俺は知っていた。


「それにさ、誰かを利用しようと思ってるような人が、あんなに拍手されると思う?」

 由比ヶ浜の声に白組の方を見ると、そこには白組のメンバーそれぞれから、先程の合戦の功績を称賛されている雪ノ下と相模の姿が見える。


「雪ノ下先輩! 相模先輩、お見事でした!」

「雪ノ下さん! なんとか勝てたね、相模さんも、すっごくかっこ良かったよ!」

「ふむ!! 赤き侍共の魔の手から我等が領土を奪還せし聖なる騎士、セイバー殿とジャンヌダルク殿に向け……総員、敬礼!!」

「一色さん……戸塚くん、あなたもお疲れ様。皆が頑張ってくれたおかげで、点差を空ける事が出来たわ……」


「相模も、あんたなかなかやるじゃん、最後のアレ、あーしも正直見直したよ」

「ほんとほんと、いやー、相模さんも結構やるわぁ、マジかっこ良かったわぁー」

「え、ええ……いや、その……」

「いいぞーー!! 雪ノ下さんも!! 白組のみんなも! かっこよかったぞーー!!」

「お疲れ様ーーー!!!! 良い試合だった! ありがとうーーー!!!」

 赤白問わず、観客席を含めた多くの人達から浴びせられる、割れんばかりの称賛の声。

 その黄色い歓声を浴び、澄まし顔でいながらも微かに微笑み返す雪ノ下と、ぎこちない笑顔で手を振って応える相模の姿がそこにあった。

 由比ヶ浜の言う通り、確かにあれは、誰かを利用するような奴に向けられる賛美ではない。

 仲間と共に勝利を掴み取った、英雄に向けられるべき称賛だ。


「きっと、それだけ赤組に……ううん、ヒッキーに勝ちたかったんじゃないかな、それこそ、ワラにも溺れるぐらいの気持ちでさ」

「由比ヶ浜……かっこいい事言ってるようだけど、多分藁にもすがる気持ちだと思うぞ」

 溺れる者と縋る者がごっちゃになってんぞ、本当にこいつ受験大丈夫なのか。


「べ、別にいいじゃんそんな事!! とにかく、次こそ勝つんだから! ね?」

「へいへい……」

 などと言ういつも通りのやり取りがありつつ……俺と由比ヶ浜は並んで退場門を潜り、熱戦の終えた戦場を後にする。


「それだけ赤組に……俺に勝ちたかったんじゃないか……か」

 由比ヶ浜の言葉を頭の中で復唱し。再度、俺は白組の方を見る。

 今も尚、白組の席では一色が、戸塚が、戸部が、材木座や三浦でさえもが雪ノ下と相模の手を取り、騎馬戦の勝利を讃えあっている姿が見られた。

 それは、俺がよく知る孤高の女王とは違う、雪ノ下雪乃の姿。


 雪ノ下は、決して一人で勝とうとしているのではない。 仲間と共に勝とうとしていたのだ。

 その姿に、またも胸の中に熱いモノが込み上げて来るのを、俺は感じていた。

 それは青春冷めやらぬ競技場の熱気のせいか、はたまた強く頭頂部を刺す日差しのせいか……それは分からないが、先程以上に、このままでは終われないと言う思いが強く、俺の胸中に渦巻き出す。


 次こそは勝つ――――。

 何度口にしたか分からない言葉を、今一度口にして……

 俺は、静かに自分の席へと戻って行った。



第四章 やはり、彼らの祭りは終わらない。

 五章へ続く。



[239] 第四章 やはり、彼らの祭りは終わらない。其ノ肆 2

投稿者: キラ 投稿日:2017年11月14日(火)08時01分51秒 p1754200-ipbf1309funabasi.chiba.ocn.ne.jp  通報   返信・引用

  ×  ×  ×

「いててててて……」

 雪ノ下の上空からの突撃をモロに受け、俺の騎馬は見事に戦場に散った。

 倒れた時の衝撃で全身を打ってしまった事もあり、痛みが身体中を縛り上げている。

 それは雪ノ下も同じらしく、体を摩りながら立ち上がったかと思いきや、俺の姿を確認すると、無言で俺に手を差し伸べていた。

 ありがたくその手を取り、雪ノ下に向き合って俺は言う。


「最後の最後にやられたぜ、お前、本当に負けず嫌いだよな」

「それはお互い様でしょう、あなたの奇策も、なかなか捻くれてて実にあなたらしかったわ……本当、あなたは最後まで私を手古摺らせてくれたわね」

「へへ、まさか雪ノ下にそこまで言われる日が来るとは思わなかったな」

 笑いながらも俺と雪ノ下は互いの健闘を讃えあっていた。

 本当に、こいつとこんな顔をして向き合える日が来るなんて、思ってもいなかった事だ。

 それだけに、俺の中に充実感があるのもまた事実だった。


「ヒッキー、ゆきのん、大丈夫?」

 遅れてきた由比ヶ浜が心配そうに声をかけてくれる。

 その後ろには葉山や戸部達の姿も見える。皆、大将が倒れた事を心配して来てくれたのだろう。


「ああ……由比ヶ浜、悪い、結局最後に落ちちまった」

「ううん……ヒッキーもゆきのんも、怪我がなくて本当に良かったよ」

「いやー、しかし、最後の最後にやられちゃったね、お兄ちゃん」

「ああ……ま、次勝てばいいだろ、どの道この勝負はもう終わりだ」

「…………………」

 軽口を叩きつつ、俺は安堵していた。

 確かにまだ騎馬戦は続いていたが、既に大将騎は相打ちとなり、残り時間もあと僅か……互いにカードは切り尽くしてしまったし、あとは時間切れを待つだけだ。

 結果、この試合で赤組が白星を上げる事は叶わなかったが、両軍の倒れた騎馬と残った騎馬を計算すれば、たとえここで白組に負けたとしても、そこまで酷く点差が開く事はない筈だ。

 なれば、真の決着は、次の二人三脚で付ければ良いと、俺はそう考えていた。


「二人ともお疲れ様……あのさ、比企谷、雪ノ下さん。大将同士、互いの健闘を称えて、最後は握手でってのもいいんじゃないかな?」

 横から葉山が爽やかに言う。

 そういうのは俺の柄ではない筈なので、断ろうとも思ったのだが……。

 俺と雪ノ下を見る周囲の視線は既に葉山に賛同しており、また、それを期待しているようだ。

 観念したように、俺は雪ノ下の方を見ずに手を差し出し、言ってのける。


「やれやれ……雪ノ下、次は負けねえからな」

 照れ隠しに言った俺の言葉に対し、雪ノ下はやや冷淡な口調で返す。


「うふふふ……悪いけど、まだこの手は握れないわ……ねえ比企谷くん……まだ、勝負は終わっていないのよ?」

「お前な、確かにまだそうだが…………」

「いいえ……この試合は――――」

 雪ノ下に向き直り、彼女の眼を見たその瞬間、俺は直感する。

 彼女の顔は、一見すると笑っているように見えたが、その笑顔には、例えようの無い、嫌な不気味さがあった。


 ――そうだ、俺はこの眼を知っている。 相手の全てを見透かしたかの様に冷たい視線を、俺は嫌という程知っている。

 隣の葉山もそれに気付いたらしく、その額には一筋の汗が流れていた。


 雪ノ下のその眼は、例えるなら“あの人”と同じ類の眼だった……うすら寒さすら感じさせる様な、抗いようの無い魔性を秘めた瞳……

 それはまるで、こいつの実姉、雪ノ下陽乃を彷彿とさせる様な……含みのある眼差しだった。


 その眼に反応した俺の意識が、これまで無い程の速度で思考の海へ落ちて行く。


 ……思えば、気になる点はいくつもあった。

 ――何故、体力に自信の無い雪ノ下が、決して自分から目立つような行動は取らないあの雪ノ下が、自身の疲弊も憚らず先陣を切り、殲滅戦に臨んだのか。

 仮に試合前に三浦が煽ったとしても、万全を期してあらゆる状況に対処できるように策を巡らすのが俺の中の雪ノ下雪乃である。にも関わらず、ああも攻撃的な布陣を敷いたのは何故か。

 全騎出撃……そして混戦に見せかけた奇襲と、王手を狙ったと見せかけた殲滅戦……。


 騎馬戦が始まってからの雪ノ下の動きを再度思い返してみる、合戦中は気持ちが昂っていた事もあり気付けなかったが、今にして思えば疑問点ばかりが浮かぶ。

 そして考えに考えを巡らした結果、俺の中の疑惑が確信に変わり……。


 ……そうだ、今の今まで、完全に気配を絶っていた奴がいた……それはまるで、去年の棒倒しの時の俺の様に。

 戦いに参加する気配を見せておきつつ、その実合戦には参加せず、静かに周囲から離れていた奴がいた。

 そいつの存在を俺が失念していた理由……それは、今の今まで交流が無かったせいか、はたまた過去の一件から無意識に俺自身がその存在を遠ざけていたのか……それは不明だが、一騎、合戦に参加しているように見せ、白組の陣営からさほど動いていない奴が確かにいた。


 俺自身すらも明らかに見失っていた、その存在。

 そして時間切れ間際、巻き上がる土煙の中から、突如一騎の騎馬が赤組陣営の旗に向かい、突撃を仕掛けて行くのを、その場の全員がはっきりと確認した。


 ――雪ノ下の真の作戦、それは副将全騎はおろか、自身さえも囮にした、巧妙に巧妙を重ねた大逆転の一手だった。


 全ては“そいつ”の存在をこの瞬間まで覆い隠す為。

 その為に雪ノ下は己の疲弊も構わず、敵騎の殲滅戦などという大胆で目立つ大立ち回りをやってのけたのだ。

 それに気付いた瞬間、本陣に向けて有りっ丈の声で俺は叫んでいた。

 誰でもいい、海老名さん、残った奴ら、聞こえてたら気付いてくれ! あいつに――!



「本陣を守れ!!!!!! あいつを……相模を止めろおおおお!!!!!!!!」



 怒鳴る様に俺は声を荒げる。

 俺の声に気付いた海老名さんが遅れて本陣に駆け出していたが、その時には全てが遅く、次に俺の眼に映ったのはその騎馬――相模南を騎手とした一組の騎馬が、雄々しくも赤組の本陣にそびえ立つ旗を倒す場面だった。

 赤組の旗がゆっくりとグラウンドに崩れて行くのを確認した雪ノ下が俺に向け、一言呟く。


 「――私達の、勝ちよ」


 一言、決して驕ることなく、ただ事実を淡々と語る様に、雪ノ下雪乃は、自軍の勝利を宣言していた。[newpage]


レンタル掲示板
4件の内、新着の記事から50件ずつ表示します。

お知らせ · よくある質問(FAQ) · お問合せ窓口 · teacup.レンタル掲示板

© GMO Media, Inc.